食事と脳の関係とは?

 脳の栄養不足が認知機能の低下を招く原因の一つであることが東京都健康長寿医療センター研究所での長年の研究結果で判ってきました。では、どんな食事であれば脳の年齢を若く保つことができるのでしょうか?
 中年以降に粗食を続けていると栄養不足になり、脳の老化につながるということですが、栄養不足による血管の老化のために、脳の毛細血管が小さな脳梗塞を起こし、血管性認知症を引き起こすことがあり、また活動量が少なくなると食欲もわかなくなり、栄養が足りなくなるという悪循環に陥ってしまいがちです。認知機能低下になりやすい食事とはどのようなものでしょうか?
 ひとつに、動物性タンパク質と脂質の不足が挙げられます。動物性タンパク質は細胞をつくる大切な材料であり、体内では合成できない9種類の必須アミノ酸がバランス良く含まれています。
 脳は水分を除くと約6割が脂質で、脳の神経細胞から情報を信号で伝える連絡網(軸索)が延びていて、その情報伝達の通路を脂質が包んで守っていると言われます。また、脳の細胞膜にも脂質があり、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸も体内で作られにくい必須脂肪酸なので食事から補うことが大切です。
 そこで、毎日摂りたい食事の品目ですが、牛乳・乳製品、卵、魚介類、肉類、緑黄色野菜、油脂類、果物、イモ類、海藻類、大豆・大豆製品など、10品目が挙げられます。青魚には認知機能に関係するDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれ、肉や卵には記憶や学習能力に関係するAPA(アラキドン酸)が多く含まれています。これらの脂肪酸をバランス良く摂ることが推奨されています。
 もともと魚をよく食べてきた日本人の中には魚は足りていても肉が摂れていない方も少なくないと言われていますので、バランス良く摂ることをお勧めします。ただ空腹を満たすために食事を摂るだけでなく、旬の味覚を味わい、楽しく食事することで食欲も増進します。脳に大切なものを摂って活動的な毎日にしたいものです。

<参考文献>
「美感遊創」サントリーウェルネス  東京都健康長寿医療センター研究所 副所長 新開省二先生談