西洋医学と漢方医学の病気に対する視点が異なるとは?

 和漢診療学の寺澤先生が以前からルービックキューブを対象にして西洋医学と漢方医学の違いをルービックキューブの正面と側面に例えて、以下のように説明しておられる。
 「大学病院や医療センターを何カ所も廻っても問題の解決を得られない患者さんが、漢方薬を用いた和漢診療で簡単に治ってしまうことは日常しばしば経験するが、それは魔法でもトリックでもない。その昔ルービックキューブが流行ったが、このキューブ(立方体)でいうと、西洋医学と漢方医学では病気をみる視点が異なる。つまり、正面である西洋医学からばかり見ていたのでは見えない側面を漢方医学で見れば、解決策が得られるというだけの話である」
 加えて和漢診療は、このキューブの正面、側面、そしてこれら二面の根底にある生体の異常が観察できるキューブの上面も一度に見ることができると言われている。
 たしかに、西洋医学と漢方医学で病気に対する視点が異なるというのは的を得た捉え方と思われる。日常、命に関わるほどの重症ではなく、西洋医学的にはそれほど問題がなかったとしても、その人にとって不調は確かであり、生活上の質も良くない病状が存在する場合がある。そのような場合に、漢方医学では多くの処方が可能である。
 漢方医学でいう気血水の気虚、気鬱、気逆や瘀血、血虚、水滞などについては紀元前6世紀以来の老荘思想にその基をおくもので、現在でも人間存在そのものに矛盾することなく、漢方医学においては心身一如という医学思想で考えることで病気そのものが判りやすくなってくると思われる。

<参考文献>
「和漢診療学」岩波新書 寺澤捷年先生著