第5話 日頃の原動力

2022年4月12日

 未病への対応という目標がひーこ先生の原動力の一つだということを述べたが、そのことを日頃つねに考えて行動しているわけではないと思われる。では、ひーこ先生は日頃どんなことを考えて行動しているのだろう。

患者さんや周囲の人たちのことを考えたり、心配したり、その人たちのために何かすることが楽しい
 ひーこ先生が自らの考えを言葉に出すことはあまりない。ちょっとした会話や言動から推察するしかない。
 言動から見えてくるのは、ひーこ先生は、自分が関わる人のことをいつも考え、心配しているように映ることだ。診察の翌日、“昨日の朝日さん(仮名)への漢方は人参養栄湯のほうがいいかもしれない”“先日来られた夕日さん(仮名)は、もしかするとコロナの後遺症で免疫力が低下していて症状が出ているのかもしれない”などと、何の脈略もない場面で、急に話し始めることがよくある。また、孫やひ孫の誕生日をよく覚えていて、“誕生日プレゼントは何がいいだろう?”“どんなことに今興味を持っているのだろう”とつぶやいている姿をよく見かける。身近な周りの誰かが病気になると、すでに症状が治っているのに、しばらく“大丈夫だろうか?”としつこいぐらいに心配している。
 映画鑑賞や楽器演奏、菜園づくりなどといった一般的な趣味を持っていない、という。本人は“楽しい”と思えるようなことがないから”とか“無趣味なんですよね”などと話すが、患者さんや周囲の人たちのことを考えたり、心配したり、その人たちのために何かすることを楽しんでいるように見える。それが日頃の原動力なのではないだろうか。

医師としての使命感、そして漢方を広めたいという想い
 もちろん、漢方の良さをもっと多くの人に使って知ってもらいたい、という想いは強く、それが漢方クリニックでの診療の原動力であることは確かなようだ。
 また、患者さんの症状が良くなるために少しでも役に立ちたい、という医師としての想いも強く、現在も精神科医療関連、漢方関連の書物・雑誌に毎日のように目を通し、セミナーの案内を目にすれば、当たり前のように参加し、年齢に関係なく医師として今日も成長しようと考えている。セミナーの多くがオンラインになった今でも、その歩みは衰えない。映画を観ていると一時間もじっとしていられないひーこ先生だが、医療関連のセミナーであれば、パソコンの前で平気な顔で2,3時間じっと講演に耳を傾け、メモを取り続けている姿は同一人物とは思えない。