第26話 白衣の秘密

白衣を着て診察するひーこ先生
 ひーこ先生は白衣を着て診察する。病院では白衣や診察着の先生が多いが、他の精神科クリニックなどを訪れると、先生がカジュアルな服装をしておられることも多い。実際、現在のクリニックでは薬品や血液などを扱うこともなく、さらにアクリル板で患者さんとの間は区切られているので、白衣を着る必要性はない。
しかし、ひーこ先生は、他のクリニック時代も含めて、以前からずっと白衣姿。左の袖には某医科大学のマークがある。

白衣にこだわりはない
 白衣に対して、もしかしたら何か医師としてのプライドが秘められているのかと想像し、ひーこ先生に、なぜ白衣なのかと尋ねると、なんのこだわりもないとの返答だった。以前から白衣を着ているし、病院でも他のクリニックでも周りの先生方も白衣や診察着だったので、違和感を持ったりすることもなかったようで、あえてこだわる理由を挙げるとすれば、体型が隠せるかららしい。秘密やこだわりを聞けるかと期待していたが、軽く肩透かしを食らった。
 逆に、何か素敵なユニフォームがあれば教えて欲しいと言われた。ひーこ先生に普段着のままで診察をするという発想はないようだ。白衣は仕事着のひとつで、診察をするときは仕事着に着替える。ONとOFFをきちんと分けているということらしい。ONのときは「ひーこ先生」で、OFFのときは「ひーこさん」。
 白衣を着たひーこ先生は、背筋も伸び、年齢を感じさせない聡明さとしっかりした口調で患者さんに向き合う。白衣を脱ぐと、心なしか背筋が・・・。白衣にこだわりはなくとも、白衣を着るとスイッチが入るようだ。白衣には、ひーこ先生を心療内科・精神科医師に変身させる、そんな不思議な秘密があるといえそうだ。