心療内科・精神科医として

広告掲載や記事掲載が続き、有難いコメントをもらう 
 エッセイ本の出版から半年近くが経過したが、その後も出版社の広告やWebメディアでの抜粋記事掲載、さらにはネットニュースでの掲載などが続き、書籍をお読みいただき、”西洋薬で副作用が強いので是非先生に診てもらいたい”、”遠方だが一度先生に相談したい”、”近くに漢方で心療内科を行う先生を紹介してもらえないか”といった問合せが日々続いている。
 大変有難いコメントで、たしかに初診の予約も以前に比べると多くなった。ただ、お電話をいただいても1ヶ月以上先までお待ちいただかなければならない状況にあり、ひーこ先生としては有難い反面、お待たせして申し訳ない思いでいる。

インタビューや取材依頼も増えるが、ほとんどお断りする
 そんな中、インタビューや取材依頼、講演依頼、書籍出版依頼なども増えている。これも有難いお話で、書籍の売れ行きが良くなければ、そのような依頼も来ないであろうし、出版関係の方々にも書籍を手に取って読んでいただき、”人や物事に執着しないおおらかな心構えや、年齢を重ねても新しいことに挑戦し続ける生き方に感銘を受けた”、”先生のメッセージの一つ一つが心に沁み、自分もそうなりたいと憧れの念を抱いた”などのメッセージをいただくと、ひーこ先生も何か恥ずかしい気持ちになったりする。
 しかし、インタビューや取材のご依頼も、講演のご依頼も、お世話になった方の顔を立てるなど、何らかの事情がない限り、ほとんどお断りさせていただいている。別書出版の期待にもお応えできていない。そもそもあまり目立つのが得意ではなく、人前で話すのが不得手である先生の性格もしくは性質上の理由も大いにある。新聞広告や書店のポップアップ広告に自身の顔や名前が出たりするのも恥ずかしいと感じることも多く、あまり乗り気ではない。

診察や漢方の勉強を優先したいひーこ先生
 ただ、先生として患者様と向き合う時間を大切にしたい、もっと漢方を勉強したいというのが先生の本音のようで、患者様を待っている時間も漢方関連の雑誌や書籍を読んで、いつもメモ書きをしている。「今度、○○さんにこの漢方を処方してみようと思う」と話しているときの笑顔が一番楽しそうかもしれない。

2022年9月1日漢方専門医として

朝食は食べていますか?
 患者様にご記入いただいた問診票や適応状況アンケートを見ながら、ひーこ先生は患者様に対して、“朝食は食べていますか?”、“朝は陽の光を浴びていますか?”、“水分やミネラルは摂っていますか?”ということをよく尋ねる。20代、30代の女性が来院された場合は朝食のこと、60代以降の方が来院された場合は水分やミネラルの補給のことを尋ねることが多い。
 正確なデータは取っていないが、心身の不調を抱えている20代、30代の女性の多くが朝食を食べていないと答える。その場合、ひーこ先生は“牛乳一杯でもいいから朝食は必ず取ってくださいね。心の調子を整えるためにも朝食は大切ですよ”と答える。適度な栄養摂取、適度な休養が健康には大切、というメッセージの一つの表現のようである。
 不眠や不安な夜を過ごした朝は、どうしても身体は不調で、朝食を食べる気持ちにも状況にもないのかもしれないし、忙しくストレスフルな生活では朝食をゆっくり取ることも難しいかもしれないが、東洋医学の心身一如の考えからすると、心の調子を整えるために、逆に朝食をゆっくり取る時間をまず確保するところからリスタートしてみるというのも一案なのかもしれない。
 夜型の方や生活習慣が乱れ気味の場合には、“朝の陽の光を浴びるようにしてくださいね”とひーこ先生は伝える。生活習慣の見直しは、口で言うほど容易なことではないが、ひーこ先生は、漢方薬を朝食前に服薬をするように勧めるので、朝起きたら陽の光を浴びながら、漢方を飲んで朝食を食べて一日をスタートするきっかけにするという手段もあり得る。

心の不調も身体の不調もつながっている
 栄養や生活習慣のこと以外にも、ひーこ先生は、血圧の状態や舌の状態などからむくみの様子を診ながら、“食欲はありますか?”、“便通はどうですか?”、女性の方には生理痛や生理前のイライラについて尋ねる。最近はPMS(月経前症候群)に悩まれる方が多いと言われるが、心の不調がPMSと関連しているケースはごく一般的なように見受けられる。
 身体不調と心の不調のどちらが原因かはわからないが、PMSに限らず、心の不調とそれら身体症状はつながっているのか、心の不調を感じている方が何らかの身体不調も併せ持っている場合は多い。心も身体も両方の不調を、漢方で整えようという漢方医学の取り組みは理にかなっているようにみえる。

漢方専門医として

漢方を学ぶきっかけは末娘の病気
 精神科医として再スタートを切ってしばらくは、ひーこ先生も通常の精神科医の先生方と同様に、患者さんにはご本人の精神障害の症状に合わせた西洋薬を主に処方していた。今でも精神科の薬物療法としては西洋薬が一般的で、漢方薬はあくまでも補助的な使用に限られている場合が多いが、当時は漢方薬を処方する精神科医は非常に少なかった。
 転機は今からおよそ30年ほど前。ひーこ先生の末娘が風邪をひいたため、風邪の諸症状に処方する漢方薬を飲服用させたが、状態がかえって悪化。たまたま漢方講演が開催されたため、講演後に講師の先生に指示を仰ぎ、直ちにその薬の服薬は止めたが、漢方服用により間質性肺炎を引き起こしており、一歩間違えば重篤な状態になるところだった。
 日本では、1967年から漢方製剤の保険適用が開始し、医師免許があれば他に特別な資格がなくても漢方薬を処方することが可能であるが、本場中国では漢方を専門的に取り扱う中医師免許があるほど、漢方は奥深いものである。漢方処方の難しさを自身の娘への処方を通して痛感したことで、ひーこ先生は本格的に漢方処方の勉強を始めなければと強く思った、という。

専門医の取得を目指す
 日本東洋医学会や漢方製剤会社をはじめとする漢方処方の研修を積極的に受け始めたひーこ先生だったが、単に学ぶだけでは満足しなかった。上述の末娘の件でお世話になった講師の先生が、京都では漢方に非常に詳しい先生だったこともあり、疑問に思うことや迷うことがあれば直接先生に問い合わせて教えを乞うた。
 患者さんの診察にも積極的に漢方薬を処方するようになり、西洋薬でなかなか治癒しない患者さんが漢方服用により、見違えるほど笑顔になっていく姿を多く目にした。そのなかには漢方系の研究誌に研究報告をした症例もあり、多くの経験を積んだ。そして、学び始めて約10年後、漢方専門医を取得する。それは、京都の心療内科・精神科医では極めて稀であった。ただ、とくに女性の場合、漢方処方により体の不調だけなく、心の不調も改善に向かうという確信があった。
 ひーこ先生にとって、漢方処方はいまだ学習途上だという。漢方は奥が深いと日々痛感するという。さらに勉強を進めて、専門医となって20年を経過した今からでも少しでも成長しようとしている。様々な治療を受けてもなかなか改善しなかった患者さんから「良くなりました」と笑顔で報告してもらいたいと願いながら。