一人の人間として

戸惑いながらも人生初の出版
 ひーこ先生が人生初のエッセイ本(「ほどよく忘れて生きていく」サンマーク出版)を出版した。
 元来は表に出たいタイプではないので、通常は自分のことを開示することはほとんどしない。今回も、本人が出版したいと希望したわけではなく、昨年の5月頃に出版社からお話をいただき、皆さんのお役に立てるなら、また本を出せるなんて人生で誰しもが経験できることではないからと、了解した。しかし、実際のところは複雑な思いを抱えているに違いない。
 「恥ずかしい」という言葉はひーこ先生の口から何度か聞いた。読んだ人がどう思うか分からないことに対する不安や、”その年齢でこんな本を出しておこがましい”と知っている人から言われるのではないか、という不安も感じてきたようだ。いつもは楽観的な先生だが、今回は初めてのことで、先が見えないだけに戸惑いも見てとれた。だが、出来上がった本を見てからは、後戻り出来ないと感じたのか、不安を口にすることはなくなった。

読者がもっと自分を大事にすることが出来、少しでも読者の役に立てれば嬉しい
 クリニックを開業して、ようやく患者様がお越しになり始めたころ、通院している方のSNSを介して、ひーこ先生の存在が出版社の方の目に止まった。先生は当たり前のことを普通にしているだけという感覚だが、一般的に考えると、7人の子育てをし、専業主婦を経て50歳を超えて精神科医として復帰し、89歳でなお新規開業、しかも漢方メインの心療内科の女性医師という存在は、当たり前ではなかったということらしい。通院して下さった方のSNSを介して話が広がったことを、先生は不思議な縁と有難く感じている。
 本日1月19日の発売日を迎えて、書籍タイトルを見ながら、「”ほどよく忘れて生きていく”って、認知症になって生きていくのがいいですよ、って言いたいんじゃないからね。そんなふうに勘違いされたら困るけど」と苦笑いしながら話す。何歳からでもやりたいと思うことがあればやってみてほしい、周りに色々な気を遣って我慢していた人がもっと自分を大事にして生きてもらえたら、というひーこ先生の思いが、読者の方々に少しでも伝わり、少しでも多くの方がこれからの人生を前向きに楽に過ごしてもらうと同時に、自分の生きてきた人生が人の役に立てるのではあれば嬉しいという先生の願いが実現することを心から願う。